わたなべクリニック過去10年間の前立腺生検の統計 - 2022年1月20日

開院以来の10年間で計131症例の日帰り前立腺生検を施行しています。医学統計は自分行った診療の反省や改善のため重要と考えております。

1)患者背景

・平均年齢 60.5歳(51歳から79歳の方に前立腺生検を行っておりました。)

・PSA値 中央値 7.72ng/ml 実際にはPSA4.18から初診時に既に進行癌だった方のPSA2344ng/mlまでの幅がありました。

・前立腺推定重量 20〜180g 前立腺の大きい方の生検は尿閉や血尿などの合併症が起きやすくなります。30g以上を前立腺肥大症と考えておりますが、180gの患者さんでも比較的年齢が若く排尿障害がない方でしたので生検後のトラブルはありませんでした。

2)合併症

・術後直腸出血:5分間程の圧迫止血を要する11例

・血尿:生検直後に微量出血9割以上に認めていますが、翌日にも血尿を認めている症例は2割以下です。

・尿閉 4例:4例とも著明な前立腺肥大症の方で、1例は生検後2時間経過しても自力排尿出来ず尿道留置カテーテルを1日留置、一人は帰宅後に排尿できず夕方に再受診され尿道留置カテーテルを1日留置しております。翌日抜去し自力排尿可能となり合併症はありませんでした。2人の方は夜間に基幹病院の救急外来を受診され導尿をされましたが、翌日よりは正常に自力排尿可能でした。

・発熱・急性前立腺炎なし。

 前立腺生検で一番困る合併症は発熱・感染症です。出血はいずれ止まりますし、尿閉も一過性の合併症だと考えています。大学病院や基幹病院勤務の頃は年間80例近い前立腺生検を経験しておりましたから、急性前立腺炎から敗血症に至った症例も複数回ありました。予防的に抗生剤投与をしておりますが、症例数が増えればいずれ当院でも起きうる合併症と想定しています。幸い開院以来経験はしておりません。報告されている前立腺生検合併症の発生率に比べ当院の合併症発生率は少ないようです。生検方法にコツや慣れもあるのですが、当院での合併症の少ない理由として 1)外来生検なので重篤な合併症のある方や合併症の起きそうな予感(医学的表現ではないですが、そう感じる時があります。前立腺重量が大きい方、全身状態がやや不良な方、残尿が多い方、糖尿病の方、などです)がする症例は基幹病院に紹介している。2)教育機関としての基幹病院では研修中の医師が生検することが少なくない、ことが要因ではないかと推測しております。

3)生検結果

 56例(全体の42%)で前立腺癌を認めました。

 前立腺癌は悪性度によって全く予後が異なる悪性腫瘍と考えています。高分化型前立腺癌G1の場合、条件が揃えば未治療で経過をみる監視療法もありますが(当院では監視療法で経過をみている方が6人おられます)、G4以上の低分化型前立腺癌ですと根治的手術を行っても一定の割合で再発します。初診時に複数臓器(骨、肺)に転移していた症例でも悪性度が低い場合、ホルモン療法のみで15年以上にわたり制癌状態の方もおられます。

  • 悪性度が低い高分化型前立腺癌G1(グリソンスコア3+3):15例
  • 悪性度が中等度の中分化型前立腺癌G2(グリソンスコア3+4):6例
  • 悪性度が中等度の中分化型前立腺癌G3(グリソンスコア4+3):10例
  • 悪性度が高い低分化型前立腺癌G4(グリソンスコア4+4):13例
  • 悪性度が高い低分化型前立腺癌G5(グリソンスコア4+5以上):12例

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