前立腺肥大症は、尿道が狭くなる病気なので尿が出にくくなる症状は理解できるが、なぜか初発症状は夜間頻尿やトイレに間に合わず漏れてしまうなど蓄尿障害(尿をためることが出来ない)であることが多い。このことを説明するには、かなりマニアックな話なんですが、私の得意とする分野なので少しだけ解説させてください。
前立腺は諸説ありますが、なぜか50歳頃から徐々に大きくなります。普通の臓器は年齢とともに小さくなったり、萎縮したりするのになぜか前立腺だけはプリプリと大きくなっていきます。その様子をしばしば果物のライチや丸いゴムに入った水ヨウカンに例えられます。神様はなぜ加齢に伴い前立腺を肥大させたかはいずれ持論を披露したいと思います。
前立腺が大きくなるとその中を貫く尿道が狭くなります。狭くなると、どのような反応が起きるかと言うと、頑張って狭い尿道から尿を出そうとするので、ポンプである膀胱は若い頃より頑張って収縮しようとします。その結果、若い頃より膀胱は高圧排尿を強いられる様になります。この時期を所謂 代償期と言って、見かけ上は尿の勢いなど排尿は良いように見えるわけです。そのような状況を数年から十数年続けると、膀胱も疲労して遂にはパワーダウンしてしまいます。 その結果、尿の勢いは悪くなり残尿が出現するようになるわけです。
その高圧排尿は膀胱にどのような変化が起こすのでしょうか?実は、動物実験でしか分かっていないのですが、この高圧環境が膀胱にゆっくりとダメージを与えているようです。膀胱は強く収縮するため神経(副交感神経)の命令に効率良く反応するように変化してきてしまいます。その結果、少しの神経刺激で過剰に反応する筋肉に変化してしまい、頻尿や切迫排尿などの過活動膀胱の状態になってしまうと考えられています。
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