わたなべクリニク院長雑記: 泌尿器科疾患アーカイブ

泌尿器科疾患の最近のブログ記事

 先日 地元のケーブルテレビにて"過活動膀胱"の話をする機会を得ました。
今年で50歳になる割には落ち着きのない写りに恥じ入るばかりですが、youtubeで見て頂くことが出来ます。
http://www.youtube.com/watch?v=GKOWNFC_HVw


医師を長いことしていると、手痛い思い出がいくつもあります。

 診断に苦慮する疾患に急性陰嚢症というものがあります。定義は"陰嚢の急激な疼痛を伴う腫脹をきたす疾患の総称名"ですが、簡単に言うと "陰嚢が痛くて腫れてくる"疾患群を指す。当直していると"○ンタマが痛いんです"などと言いながら思春期の少年が来たりする。この急性陰嚢症をきたす3大疾患として"精索捻転"、"精巣上体炎"、"精巣付属器捻転"が挙げられるが、怖いのは精索捻転である。精巣は陰嚢の中に転がっているビー玉のような物ではなく、血管や精管(精子の通り道)により構成される精索というものにぶら下がっている振り子のような構造になっている。捻転とは、この精索が360度以上捻れてしまう場合を指す。振り子が捻れてしまうと血流はストップしてしまうので、12時間を超えると精巣壊死に至る。よって、精索捻転の場合,8時間以内の手術が必要とされている。ただ、問題は21世紀になっても、この鑑別診断が難しくてやっかいなことである。組織はいちど壊死を起こしてしまうと二度と戻らないので、躊躇していると取り返しのつかないことになるし、どの教科書を見ても、"迷う場合には試験切開をすること!"とされているが、陰嚢が痛い人の全てに麻酔をかけて試験切開するわけにはいかない。プロフェッショナルとしては経験と知恵で判断していかなくてはならないのが辛いところである。

 診断は、触診やドップラーエコーで血流を見たりする。触診所見として、精巣上体炎の場合は精巣上体(精巣の横に付いているグニャグニャの鶏冠みたいな部分)の腫脹,圧痛,精巣挙上にて疼痛軽減(Prehn兆候)などで診断をつけるとされている。ただし、精巣上体炎は発症からの経過が長くなると精巣上体と精巣の判別が困難になることがある。また、Prehn兆候の信頼性も低いとされている。一方、ドップラーエコーでも、幼児の場合は血流描出が難しく判断に苦慮することも多い。また、乳幼児の場合,下腹部痛で受診することもあり注意を要する。要するに総合的に判断して、試験切開の必要がある場合には緊急手術として麻酔科に依頼して手術場を確保しなくてはならなくなる。術前には十分に患者さんや家族に説明を行うが、合点がいかない風の表情をされることもしばしばである。突然、聞いたことのない疾患の説明を早口でされても簡単には納得できない事も道理だと思う。経験的には試験切開の1割は捻転でなく手術の必要はなかったように思う。その場合には患者さんやその親御さんに、恐縮しながら再度説明をしなければならない。また、捻転であっても既に8時間以上経過しており、壊死状態の精巣を摘除しなくてはならない場合もある。特に日本では本疾患の啓蒙不足のため、受診された時点で手術のタイムリミットをすぎていることが多く、手術しても精巣が萎縮してしまう率が高いと言われている。

 手術して捻転ではありませんでした・・と言うのは医学的には許されるのだが、精巣上体と診断して後日に捻転だったと判明した場合は医師の立場は非常に辛くなる。私もそのような症例を経験している。最近、成書で本疾患について執筆する機会があったが、"実際には診断に迷うことも多いので複数の泌尿器科医による診察が好ましい。1人で診断しなくてはならない場合には少なくとも親に診察所見を示しながら診断に至った根拠を説明することが重要である。精巣上体炎と診断しても,捻転の除外診断が完全に出来ない場合は一泊程度の入院をさせ経過観察をする方が安心である"と締めくくっておきました。

夜尿症について

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 世の中にはいろいろな学会がありまして、私が所属している学会の中にも"性機能学会"や"夜尿症学会"などがあります。

 個人的には夜尿症診察は子供と話すのが楽しいので大好きな分野です。子供の頃におねしょをした経験は誰もがあると思いますが、おねしょの多くは自然に治癒してしまいます。私自身、最後におねしょをしたのは6年生の時でしたが、当然、今はドライな夜を過ごすことができています。一応、おねしょ治療は8歳以上でほぼ毎日おねしょをするお子さんを対象としています。クリニックに訪れる方の中にはお泊まり行事の前に焦って連れて来られる方もおられますが、正直なところ毎日おねしょをしている子が完全に夜尿をしなくなるには半年はかかるので、"来週、スキー教室なんです"みたいな場合はこちらもさっさと白旗を挙げて"先生に夜起こしてもらいましょう"と提案します。実は5年生ぐらいでも、クラスに2〜4人はおねしょをしているので、小学校の先生も手慣れていますのであらかじめ先生に頼んでおくとうまいこと夜起こしをしてくれます(現役小学校教諭の家内に確認済みです)。今までの経験で、お泊まり行事で失敗した子は一人だったように記憶しています。

 さて、学問的な講釈ですが、おねしょの原因には、1)夜間の尿量が多い(水分過剰摂取、抗利尿ホルモンの夜間分泌不足)、2)膀胱機能異常(排尿中枢が未熟で排尿反射の抑制不足、脊椎の先天的異常、尿道狭窄など先天異常など)、3)ストレスによる一過性の夜尿症があるとされています。また、昔から夜尿症児の脳波の研究などもよくされており、睡眠との関係も論じられています。経験的には昼間のお漏らし(昼間遺尿)が無い限り、普通の(?)夜尿症がほとんどで、膀胱機能異常や夜間多尿(習慣性の多飲多尿は見受けられます)が原因であることは稀と考えています。

 個人的な意見としては、おねしょの時は夢の中でも排尿していることが多いので、尿意を感じたら寝ている状態で脳が排尿命令をしているのだと考えています。学問的には証明が難しいのですが、脳が命令して能動的に排尿しているので、抗コリン剤(頻尿治療薬)などで膀胱収縮を抑制する方法は主役になる治療ではないと思っています。以前、夜尿症学会のシンポジストの時に、この私見を述べたのですが議論が続きませんでした。その背景には、薬理学的な研究の方が医療従事者にとっては理路整然として研究しやすいからだと感じています。私は疫学的なアプローチも必要と考えています。

 具体的は治療ですが、夜尿症ガイドラインによると「生活指導」「薬物治療」「行動療法」の3つがあります。私は、脳が排尿命令しているのですから潜在意識にアプローチする行動療法が第一選択と考えています。もちろん生活指導が大切な事は言うまでもありません。  

 生活指導とは、夕食を食べてから水分を控える、就寝前の排尿習慣、牛乳を夜間は控える、塩分を控える(ナトリウムはのどが乾いて水分を過剰に取ってしまう原因になりますし、体内に水分をため込んでしまう作用があります)などです。また、治療方針として "起こさない""怒らない""焦らない"が3原則です。そして、お母さんの仕事が増えるかもしれませんが夜間のおむつは止めたほうが良いと考えています。異論もありますが、おむつをしている限り快適なので自覚が生まれにくいと考えています。

 

 行動療法としては、私は以下の順番に試みていきます。

1.      ねるまえ日記 

 夜尿児によくあるパターンですが、ご飯食べて テレビ見て 宿題して 風呂入って 疲れ果てて眠気100%の状態で、親に言われて就寝前排尿をしてドドドと布団で寝入ってしまう子がいます。お泊まり行事の時に、意外と失敗が少ないのは寝る前の緊張度が違うからだと思います。この、ねるまえ日記は、寝る前に 昨夜は失敗したか否か?、下着は自分で替えて片付けたか?、朝自力で起きたか?を 表に○×をつけてから目覚まし時計をかけて、"漏らさないぞ、朝自力で起きるぞ!"と念じてから寝床に入る方法です。寝る前に一度しっかり覚醒して、自覚してから寝る習慣をつけることが大切です。また、漏らすのは本人に罪はありませんので叱ることは出来ませんが、朝を自力で起きるのはしつけとして教えることができるます。経験的に朝起きることができる様になると、夜尿も減っていると感じています。また、女の子の方が男の子より治りが早い印象です。日記法で、サクッと治ってしまう子は女の子に多いようです。なかなか治らない夜尿の子の性格として、あっけらかんとした明るい子が多い印象です。

 

2. 膀胱訓練

 この方法には賛否両論ありますが、尿意と戦う習慣やこの訓練を通じて夜尿に対する取り組み方を変える事が出来ると思っています。通常、年齢別平均膀胱容量は大体(年齢+2)×28mlです.目標を4-7歳;120-150ml8-9歳;250ml10-11歳;280ml13-14歳;280-300mlとして、膀胱容量の増大を試みる方法です。以下のことを毎日(3か月間程度)行い膀胱容量の増大を試みるので、やや手間がかかりますが親子で一緒に頑張ってもらう必要があります。

1)夕方(学校からの帰宅時),水分を取る(一回).

2)その後,排尿をできるだけ我慢させる.我慢できなくなったら,排尿させ排尿量を日記に記録する.

大切なことは、オシッコがしたくなったら我慢することに集中することです。この訓練は漏らさないことよりも、尿意を我慢することが大切と考えています。

 

3. アラーム法

 パンツに水分を感知するセンサーを取り付けておくと、夜尿の水分を感知し、アラームが鳴ります。子どもがそのアラーム音で排尿を抑制しているうちに、膀胱容量が大きくなっていくといわれています。アラームで覚醒排尿を促すのが目的ではなく、寝ている間の排尿抑制訓練と考えられていますが、その仕組みは謎です。私見ですが、漏れる→アラームが鳴る→ビクッと起き排尿途絶する(多くの例で漏れる量が減ります)を繰り返すうちに、潜在意識でアラームが気になり、睡眠時の排尿命令が控えられるようになるのかな?と考えています。?5000円程度の機器を購入する必要がありますが、当院では貸し出す事も可能です。

 

 ここまでで、30〜50%の子は治りますが、駄目な場合は次の薬物療法を試みます。

 

1. 抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン酢酸塩水和物)

 就寝前に点鼻(スプレー)して鼻の粘膜から吸収される薬剤で、尿を濃くして尿量を少なくする作用を持つ薬剤です。水中毒(体内の水分が増えナトリウムが低くなる状態)になる可能性もあるので投与前2〜3時間から水分を控える必要があります。夜間尿量を減らすという単純な方法ですが、3割以上の子に効きます。点鼻ではなく内服薬も認可されたようです。

 

2. 抗うつ薬

 うつ的な状態を明るくしてくれる作用ですが、一昔前までは夜尿症治療の王道の薬剤でした。眠りを浅くする作用とともに、弱いながらも抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と抗コリン作用(膀胱を大きくする作用)を持つ薬剤です。重篤な副作用がヨーロッパで報告されてから、あまり使われなくなりました。

 

3. 抗コリン薬

 飲み薬で、尿を多く膀胱にためられるように、膀胱機能などを安定させる薬剤ですが、症例を選んで用います。

 

 いずれにせよ自然に治ることですので、焦らず治療することが肝心だと思います。また、お泊まり行事対策としては、先生にお願いするのが一番安心と考えています。

 以上のことは、昼間は漏れない事を前提にしています。昼間遺尿に関しては取り組み方が変わりますし、子供のプライドもありますから就学時前に早めに治療することが大切と思います。いずれ、このことにも触れてみたいと思います。

 膀胱炎の主な症状は、トイレが近くなる症状、いわゆる頻尿や排尿のときの痛み、尿の色が濁ってしまうなどがあります。急性膀胱炎、20代の性活動期と感染防御が弱っている高齢者に多く2峰性の年齢分布を示します。

発症の原因は細菌感染です。急性膀胱炎を起こす細菌は大腸菌が多く、細菌の感染は尿道から膀胱に入って起きます。通常は膀胱には細菌への抵抗力があるので膀胱炎を発症しません疲労や寝不足などで、体の抵抗力が弱くなると細菌に感染しやすくなり、膀胱の中の細菌が増殖して膀胱炎が発症してしまうのです。

 また、繰り返して膀胱炎を起こす方の中には、排尿障害による残尿や膀胱結石がある方や、基礎疾患として膀胱癌などがある場合もありますので注意が必要です。

 診断には尿検査が必須です。簡易的な試験紙による尿検査でも大きな間違いはありませんが、やはり顕微鏡で白血球を観察し膿尿(尿に白血球が多く存在する状態)を確認することが肝心です。一般的には注意深い問診と尿検査(検尿・尿沈渣)にて急性膀胱炎と診断し抗生剤を処方することができます。単純性膀胱炎であれば数日で治癒しますが、知覚過敏や心因性の頻尿がしばらく残ることがあります。患者さんには、風邪が治っても咳だけが残る事があるように、炎症後の知覚過敏が原因と説明しています。また、一度つらい切迫排尿を経験すると、どうしても気持ちが膀胱にいってしまい心因性の頻尿になることもあります。


 薬の服用について

2〜3日で症状が軽快するかもしれませんが、完治するまでは薬の服用を続けてください。中止した場合、再燃することもあります。ほかに服用している薬がある場合、医師に知らせてください.薬を飲んで調子が悪い場合は,内服を中止して電話で御相談ください.

 

 生活上の注意

排尿はがまんしないようにしましょう.からだ、とくに下腹部は冷えないようにしてください.外陰部は清潔を保ってください。とくに生理時には清潔に.

トイレットペーパーは前から後へ使いましょう.また、セックスは、完治するまで控えましょう.

出血性膀胱炎の場合,ワインのロゼ(赤と白の中間)位であれば気にする必要はありません.血糊がたくさん出たり,オシッコが出なくなるような時は御連絡ください.

 

 食事での注意

水分(水、お茶、牛乳など)はいつもより多めに飲むようにしましょう.目標は一日2リットルです.どんどんオシッコをして膀胱の中を洗い流す気持ちで水分を取ってください.お酒などアルコール類は飲まないでください.また、からし、わさび、こしょうなど刺激物は使用しないでください.

検診などで尿潜血反応と指摘された人の約80%には異常がないと言われております.しかし,残りの20%の人に尿路腫瘍(癌)があったり,糸球体腎炎,尿路結石や前立腺肥大症があったりします.

諸家の報告によると顕微鏡的血尿(肉眼では判らない血尿)の0.4~3.8%の人に尿路悪性腫瘍を認めると言われています.腎泌尿器科としてはこれらの病気を見逃さないため以下の検査をします.

 

初診日

検尿

尿細胞診:尿路上皮の癌の検査です.

血液検査:必要があれば糸球体腎炎の検査をします.50歳以上の男性は前立腺癌の検査(PSA)をします. 

エコー:腎臓,膀胱,前立腺を調べます

男性は直腸診にて前立腺を検査します.高齢女性の場合、必要に応じて会陰部の視診をいたします(尿道カルンクラという良性腫瘍の有無の確認)。

 

再診日

血液検査や尿細胞診などの結果説明をいたします。必要があれば腹部レントゲン, 膀胱鏡などの追加検査をします.

尿細胞診に軽度の異常を認めた場合は、3ヶ月後に再検査をいたします。

すべて異常がなければ終診ですが,40歳以上の方の場合は1年毎の尿検査とエコーをお勧めします.

 

もっと詳しく・・・・・・・・

顕微鏡的血尿の原因で頻度の高い順に列挙すると,前立腺肥大症(13%),尿路結石症(5%),尿路感染症(4%),膀胱癌 (4%),腎炎を含む腎疾患(2%),他の泌尿器癌(1%)と報告されています.

尿細胞診とは,尿路(尿の通り道)に癌があると癌細胞が混じることが多いので,顕微鏡で尿の中の細胞を病理医に調べてもらう方法です.しかし,その陽性率(癌細胞が尿に混じること)は悪性度の高い癌では80%近いですが,悪性度の低い癌の場合はわずかに10%と報告もあります.癌がある場合,全体では約50%は見つけることができると考えています.

治療法

1.      保存療法:自排石、つまり自然に尿道から石を排出させることです。水分を大量にとり、石の下降を促します。6~9mm程度の石なら3ヶ月以内に排出される可能性があるので、小さい結石の場合には保存療法を選択します。痛みに対しては、痛み止めの座薬か効果がない場合は病院で痛み止めの注射をするしかありません。痛みがひどい時や、熱が出て腎盂腎炎の併発が疑われる時は入院する必要があります。

特殊な種類の結石には結石溶解療法という結石を溶かす方法もありますが、効果に時間もかかり一般的ではありません。

2.      外科的治療:結石が1cm以上の時、結石がまったく動かない時、腎臓がはれた(水腎症)場合には、外科的治療が必要になります。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)はお腹を切ることなく、衝撃波で身体の中の石だけを壊す方法で一番身体への負担が少ない治療法です。また結石が硬くて大きい場合はESWLでは難しいので、尿道からの内視鏡(経尿道的尿管砕石術)か、腰部から腎臓に穴を開けての内視鏡(経皮的腎砕石術)を用いて結石を破砕し取り出します。

 

予防

 明らかな原因がないのに結石ができると言う事は、裏を返せば完璧な再発予防法がないと言うことでもあります。しかしながら、以下の事に注意すれば、結石は再発しにくいと言われています。生活の工夫と心掛けで予防や再発防止に努めてください。

1.水分をたっぷりとること:1日2リットルの尿量を保つようにしましょう。尿が薄くなれば結石の素である結晶ができにくくなります。水分なら何でも良いのですが、ビールなどは結石をつくる原因になる可能性がありますのでお勧めできません。

2.眠前の過食はやめる:"結石は夜作られる"と言います。就寝中は尿が濃くなるうえに、尿中の結石形成促進物質の濃度があがります。ですから、眠前には水分をとり、なるべく食事は控えた方が良いのです

3.カルシウムは適度にとる:カルシウムは結石の素になるシュウ酸と腸内でして結合し、体内への吸収を防ぎます。またシュウ酸を多量に含む、ほうれん草やチョコ、ナッツ類の過剰摂取には注意して下さい。

4.動物性蛋白質,脂肪の過剰摂取に注意:蛋白質は尿酸値上昇させ、また酸性化による尿中Ca上昇,尿中クエン酸(結石予防物質)減少させる作用があります。脂肪は腸内でカルシウムと結合してしまい、シュウ酸の体内への吸収が増加してしまいます。これらの作用はすべて結石再発へと繋がります。

お酒について:アルコールは利尿作用のため一時的に尿が多くなりますが、その反動で脱水になることが多いです。そのため 脱水による濃い尿になるので余計に結石が出来やすくなります。


包茎は"包皮を引き下ろして亀頭部すべてを露出できない状態"を言います.新生児では包皮と亀頭は癒着していることが多く,45歳以下の場合は亀頭部のすべてが露出できなくても正常と考えられています.ですから5歳くらいまでは治療をしないのが普通です.まずは手術以外の方法を試すことをお勧めします。小児包茎の治療に関しては専門家の間でもいろいろな意見がありますが、最近では特別な場合を除いて手術をしない方針が主流となっています.

一番簡単なのは,三,四歳を過ぎたら,おしっこがまっすぐ飛ぶように包皮をむいておしっこをする習慣をつけることでしょう.子供の皮膚は柔軟性に富んでいますので,排尿の度に尿の出口が見えるように包皮をむく努力をしていれば,自然と包皮は広がってきます.また,入浴時に自分でむいて洗う習慣をつけるのも良い方法です.また,包皮をむいたら戻すことも忘れないで下さい.これらを試みてもうまくいかない時は,泌尿器科を受診するのが良いでしょう.包皮にステロイド軟膏を少量塗りこんでから,包皮をむく訓練を1ヶ月程続けるのが効果的です.

強引にむくようなことをすると、包皮が元に戻らない状態(嵌頓包茎)になることがあります.戻らない時は病院を受診する必要があります.あせらず,無理をしないで,手で毎日少しずつ,包皮をむいては戻す操作を繰り返すことが大切です.

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亀頭包皮炎:おちんちんが赤く腫れぼったくなった場合は亀頭包皮炎を疑います。包皮の中にたまる恥垢(垢)に細菌がついて繁殖した状態です。膿が溜まり下着につくようなら包皮を亀頭から用手的に剥離して膿を除去させていただきます。抗生剤入りのステロイド軟膏を処方します。包皮を軽くむいて外用してもらいます。2〜3日で軽快します。

 

かんとん包茎に注意(むいたら戻す!):強引にむくようなことをすると、包皮が元に戻らない状態(嵌頓包茎)になることがあります。むいたらすぐに戻す習慣をつけましょう。長くむいておくと包皮がむくんで戻らないことがあります。戻らない時は早めに病院を受診する必要があります。  

              

前立腺肥大症は、尿道が狭くなる病気なので尿が出にくくなる症状は理解できるが、なぜか初発症状は夜間頻尿やトイレに間に合わず漏れてしまうなど蓄尿障害(尿をためることが出来ない)であることが多い。このことを説明するには、かなりマニアックな話なんですが、私の得意とする分野なので少しだけ解説させてください。 

前立腺は諸説ありますが、なぜか50歳頃から徐々に大きくなります。普通の臓器は年齢とともに小さくなったり、萎縮したりするのになぜか前立腺だけはプリプリと大きくなっていきます。その様子をしばしば果物のライチや丸いゴムに入った水ヨウカンに例えられます。神様はなぜ加齢に伴い前立腺を肥大させたかはいずれ持論を披露したいと思います。

前立腺が大きくなるとその中を貫く尿道が狭くなります。狭くなると、どのような反応が起きるかと言うと、頑張って狭い尿道から尿を出そうとするので、ポンプである膀胱は若い頃より頑張って収縮しようとします。その結果、若い頃より膀胱は高圧排尿を強いられる様になります。この時期を所謂 代償期と言って、見かけ上は尿の勢いなど排尿は良いように見えるわけです。そのような状況を数年から十数年続けると、膀胱も疲労して遂にはパワーダウンしてしまいます。 その結果、尿の勢いは悪くなり残尿が出現するようになるわけです。

その高圧排尿は膀胱にどのような変化が起こすのでしょうか?実は、動物実験でしか分かっていないのですが、この高圧環境が膀胱にゆっくりとダメージを与えているようです。膀胱は強く収縮するため神経(副交感神経)の命令に効率良く反応するように変化してきてしまいます。その結果、少しの神経刺激で過剰に反応する筋肉に変化してしまい、頻尿や切迫排尿などの過活動膀胱の状態になってしまうと考えられています。

前立腺肥大症の代表的症状は"オシッコをするときにいきんでしまう。なかなかオシッコが出ない。オシッコの勢いが弱い。オシッコのキレが悪い。残尿感がある。"などの排尿障害と"夜、何度もオシッコに起きる。オシッコがしたくなったらトイレまで間に合わない。"など蓄尿障害があります。前立腺肥大症とよく似た症状を呈する病気に前立腺癌があります。当院では前立腺癌を見逃さないようにPSAという腫瘍マーカーも検査しています。

初期の症状は生活の質(QOL)を障害するだけですが、中等度以上になると尿の勢いが悪くなるばかりではなく残尿(オシッコが完全に出なくて、いつも膀胱の中に残ってしまうこと)が出現してきます。狭い通り道(尿道)からオシッコを出すためには,尿を押し出すポンプである膀胱に負担がかかります。そのため,膀胱自体にも変化が起きます.勝手に膀胱が収縮する過活動膀胱や膀胱容量が小さい硬い肉柱膀胱になったりします。また、残尿が増加に伴い慢性膀胱炎を併発しやすくなり、腎盂腎炎などの高熱が出る病気にもなりやすくなります。残尿がさらに多くなると、腎臓にまで影響を及ぼし腎不全に至ることもあります。 

前立腺は男性の膀胱の出口に位置し、オシッコの通り道である尿道を取り巻いています。つまり尿道は前立腺の中を貫いているトンネルと考えてもらうと分かりやすい。大きさは約20cm3程度で、精液の液体部分を作ります。

前立腺肥大症は、尿道を取り囲んでいる前立腺が大きくなり、オシッコの通り道が狭くなる病気です。今のところ、なぜ前立腺が肥大し始めるかはわかってはいませんが、年齢に伴う男性ホルモンの変化と関係があるようです.前立腺は40歳代から肥大を始め、50歳代で約4人に1人、60歳代で約半数、そして80歳代では実に約9割の人に前立腺肥大を認めます。そのうち治療が必要な症状のある人は約半数とされ、前立腺肥大症は、中高年男性の誰もがなる加齢による状態と捉えることができます。

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